ラウンドテーブル2:
ポスト・パンデミックの芸術と
トランスナショナルなエコシステム

「国境をまたぐ移動をせずに国際協働創作は可能か?」という問いからスタートしたテラジアは、主にオンラインベースで交流しながら活動を続けてきました。それは当初、コロナパンデミックに対応するための一時的な策でしたが、すでに再びほぼ制限なく海外渡航が可能になった2024年現在、改めて遠隔協働の価値を見直す時が来ています。

テラジアの実践は、各地の政治社会情勢の変化や、助成金等へのアクセスの格差、表現の自由の問題等、現代の創作環境を取り巻く複数の課題と密接に関わっています。「アーティストコレクティブ」という名の下に様々な新しい形の協働のかたちが世界各地で生まれている今、既存のスキームにとらわれず、未来の創造を支えるエコシステムとはどのようなものか、共に考える場を開きます。

このラウンドテーブルの前半では、パンデミック以前に広く行われてきた「国際芸術祭」や「ワールドツアー」という上演/発表形態を改めて見直し、それらを成立させてきたエコシステムについて、テラジアの活動と比較しながら検討します。後半では、パンデミックを契機として生まれたテラジアのようなトランスナショナルなコレクティブを持続可能な形で発展させる新しいエコシステムのアイデアについて議論します。

登壇者:
長島 確
ユディ・アフマド・タジュディン
ヨラ・ユルフィアンティ

モデレーター:
渡辺真帆(ドラマトゥルク/テラジア・コレクティブ-日本)

[概要]
- ジャカルタ
会場:コムニタス・ウタン・カユ - Beranda
日時:2024年1月14日 12:30-14:30
言語:インドネシア語と英語

長島確

Kaku Nagashima

日本におけるドラマトゥルクの草分けとして、さまざまな演出家や振付家の作品に参加。サミュエル・ベケットをはじめ近現代の劇作家の翻訳も手掛ける。近年は劇場の発想やノウハウをまちに持ち出すことにも興味をもち、アートプロジェクトにも積極的に関わる。2018-20年、フェスティバル/トーキョー(F/T)ディレクター。21-23年、東京芸術祭のディレクターの1人。東京藝術大学にてドラマツルギーとパフォーミングアーツのキュレーションを教える。

ユディ・アフマド・タジュディン

Yudi Ahmad Tajudin

インドネシアの舞台演出家、俳優、キュレーター、プロデューサーで、国際的な舞台芸術の舞台やフォーラムで作品を発表している。ジョグジャカルタの学際的なアーティスト集団であるテアター・ガラシの共同創設者であり、同集団がガラシ・パフォーマンス・インスティテュート(インドネシアとアジアにおける批判的思考とパフォーマンスのためのオープンな知識交換プラットフォーム)となった際の共同発起人でもある。また、プリンス・クラウス賞(2013年)、インドネシア教育文化大臣芸術賞(2014年)、Tempo誌による最優秀演出家賞(2006年、2022年)、現代演劇研究のためのアジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)フェローシップ(2011~2012年、ニューヨーク)、アジアを横断する共同プロジェクトに対するイプセン・スカラシップ(2019年)など、さまざまな賞やフェローシップを受賞している。

ヨラ・ユルフィアンティ

Yola Yulfianti

ジャカルタを拠点に活動。2004年にジャカルタ芸術大学舞踊学科を卒業後、同大学院都市芸術文化産業研究科で研究を続ける。ダンス作品「Suku Yola」が、Internationale Tanz Film Pool Festival (2012年、ドイツ)でPearl Winner賞を受賞。2017年にインドネシア芸術大学スラカルタ校博士課程修了後、ジャカルタ芸術大学大学院で講師となる。2020-23年までジャカルタ・アーツ・カウンシルのダンス委員長を務め、2021年にジョシュ・マーシー、シコ・セチャントと共に、探求と実験に基づく振付家集団Dansityを立ち上げる。また、オーストリアのアーティスト、クラウディア・ボッセによるアジアとヨーロッパの芸術研究集団、トランスローカル・パフォーマティブ・アカデミーのメンバーでもある。都市やバーチャルリアリティ体験に焦点を当てた彼女のダンス作品は、様々なフェスティバルやアートプロジェクトで上演されている。

渡辺真帆

Maho Watanabe

通訳者・翻訳者、ドラマトゥルク。東京外国語大学アラビア語専攻卒業。パレスチナ・ヨルダン川西岸地区留学中に演劇と出会い、坂田ゆかり演出『羅生門|藪の中』に通訳・翻訳で参加。以降、舞台芸術の国際共同制作や来日公演、ワークショップに通訳・字幕翻訳・コーディネート等で関わる。ガンナーム・ガンナーム作『朝のライラック』の翻訳で第12回小田島雄志・翻訳戯曲賞受賞。中東・アジア各地に赴きながら、芸術、メディア、国際協力など多分野の人と言葉と協働する。『テラ』初演(2018)からドラマトゥルクで参加し、2020年5月、タイのゴップらと共に「テラジア」発足にかかわる。2022年度ACC(アジアン・カルチュラル・カウンシル)フェロー。