Masking/Unmasking Death 死をマスクする/仮面を剥がす

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2021年2022年5月1日より、東京藝大AAI特別企画「Masking/Unmasking Death 死をマスクする/仮面を剥がす」を開催しました。
2021年2月のクーデター勃発以降、ミャンマー出身のアーティスト カミズは、犠牲になった人々の顔をかたどったマスクを制作してきました。匿名性を保ち、ウイルスの脅威からも身を護るマスクは、現在のミャンマーにおいて生の象徴といえます。
本展では、安全のためにマスクでその身を護りながら匿名で活動を続けるカミズによる本プロジェクトを、世界初公開。アジアのアートや文化的実践を研究する居原田遥によるキュレーションで、ミャンマーのクーデター勃発から現在までを見つめ、芸術による連帯がもたらすその未来に目を向けました。

アーティストのメッセージ

「Masking/Unmasking Death」

生まれることと死ぬことは、生きとし生けるものに普遍の過程です。いつ、どのようにして生まれ、死ぬかは、私たちにはコントロールできない不可知の領域で、コントロールできるのは、誕生と死、その間をどう生きるかのみです。名誉の死、誰にも知られない死、忌み嫌われる死。それらはすべて、死ぬまでの生き方で 決められます。人間は時、場所、状況に応じさまざまな顔のマスク/仮面をつけながら生きていますが、死ぬとき、すべての仮面は剥がれるのです。
これは単なる美術展ではありません。この展示には複数の本質があります。
2021年 2月以来の革命で、軍事政権/国軍の恐怖と抑圧からの自由を求めて闘い、英雄として命を落としたすべてのミャンマー市民に敬意を表し、名誉を授ける場。彼/彼女らの死から仮面を取り払うと、その高潔さと、どんな人生を送っていたかがわかります。
また、鑑賞者が自身にとっての「死」について内省し、思いを馳せる場でもあります。立ち止まって、自分の死がどんなものになるか、少し仮面を外して考えてみてください。
そして最後に。この展覧会は私たち人間が連帯のエネルギーを感じ、生と死の認識を交える場なのです。

カミズ(アーティスト)

キュレーターのメッセージ

「絶望」を越えるために。

ここから遠く離れた地であるミャンマーで起きたクーデターで覚えたのは、途方もない絶望だった。当たり前の自由と未来を求める人々に対し、非道かつ不当な暴力が止まらない。声をあげるだけで命の危険にさらされ、時には全てを奪われ、恐怖を抱えながら耐え凌ぎ生きる人々がいる。諦めることなく、抵抗を示す声。あるいは、沈黙を続けながらも可能な手段で届く意思。拡散を求め広がり続ける情報。絶え間なく生じる「絶望」を受け止め、またそれらを超え、そして理不尽な社会に抗うため、アートをはじめとする表現が出来る/すべきこと、あるいはこの「絶望」を目にする人々に出来ることは、希望のための文化的連鎖を絶やさず、繋ぎ続けることである。

居原田遥(キュレーター)

開催概要

会期:2022年5月1日(日)〜10日(火)10:00〜17:00 会期中無休
会場:東京藝術大学大学美術館 陳列館
入場料:無料
主催:東京藝術大学大学院 国際芸術創造研究科 アートプロデュース専攻(GA)毛利嘉孝研究室、東京藝術大学グローバルサポートセンター(東京藝大AAI)、合同会社UPN
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京[スタートアップ助成]、公益財団法人 花王芸術・科学財団

キュレーター:居原田遥
アーティスト:カミズ
企画協力:TERASIA

プロデューサー:坂田ゆかり、渡辺真帆
資料制作・写真及び作品資料提供: Bullet Holes Country(北角裕樹、アウン トゥン リン)
展示・設営: 加藤康司、川田淳、寺田鵬弘、志村誠、ニーナ・ボグシェフスカヤ
展示物品(Tree)制作:林周一、河内哲二郎
広報:遠藤未来子
翻訳:ティン ティントゥン、梶田唯、キャサリン・ハリントン、渡辺真帆
会場運営:東彩織、鈴木大翔、INHO
ロゴ・フライヤー・ポスターデザイン:中本那由子
記録写真:冨田了平
ウェブサイト制作:株式会社エボルニ


※本展は、「アジアの文化芸術」に焦点をあてる「東京藝大AAI(アジア・アート・イニシアティブ)」の取り組みの一環として開催しました。会期中、会場では東京藝大AAIおよびGA毛利嘉孝研究室による特別企画展「The Arts of Dissent : Art and Democracy 不和のアート:芸術と民主主義」が同時開催されました。

3Dアーカイブ

東京藝術大学デジタルツインでは、展覧会のmatterportを用いた3Dアーカイブを公開しています。
アーカイブ制作協力:東京藝大アートDX

特別映像

本展では、日本のテラジア参加アーティストによる2つの特別な映像を制作・公開しました。

サイン・ワイン 特別演奏『ကြုံသလေဘုံဘွ 多生の縁 Kyonthalay Bonbwe』

ミャンマーの伝統音楽 サイン・ワインの演奏法をミャンマー国立文化芸術大学で研究するテラジア参加アーティストの田中教順が、伝統音楽の楽曲『ကြုံသလေဘုံဘွေ』をマウン・ザインで独奏しました。360度カメラによる映像で、会場の様子とともにお楽しみください。

演奏 田中教順/録音 三浦実穂、西原尚/映像 冨田了平/コンセプト TERASIA

居原田遥、坂田ゆかり、渡辺真帆によるアフタートーク

本展キュレーターを務めた居原田遥、プロデュースを手がけたテラジア参加アーティストの坂田ゆかり、渡辺真帆によるアフタートーク。アーティスト カミズとの出会い、本展にかけた願い、実現した今の思いを語りました。さらに裏話も交えつつ、展覧会ができるまでの軌跡を伝えました。

関連イベント

本展の会期中、アーティストやキュレーターによるイベントを開催しました。

カミズによるワークショップ

アート・セラピストとしても活動するカミズがインターネットを通じて展示空間に現れ、参加者と対話しました。

日時:2022年5月1日(日)、5日(木)、10日(火)17:00〜19:00
場所:東京藝術大学大学美術館 陳列館
出演:カミズ(アーティスト)
参加費:無料
言語:ビルマ語・通訳なし(5月1日)、英語・日本語通訳あり(5月5日、10日)
参加方法:事前予約制(各回15名)

公式noteでは、本展に先駆けてワークショップを体験したスタッフによるレポートをご覧いただけます。
【カミズによるワークショップレポート】あなたにとっての「死」とは何か

シンポジウム

クーデターから現在のミャンマーの状況をより深く知り、抵抗や民主化運動の中で生まれた文化的実践の可能性とその意義を、ミャンマー政治研究者の中西嘉宏氏と音楽を通じて政治や社会に関するアクションを行うミュージシャンの篠田ミル氏、本展キュレーターの居原田遥が議論しました。

日時:2022年5月6日(金)19:00〜21:00
場所:Zoom配信
登壇:中西嘉宏(京都大学 東南アジア地域研究研究所 准教授)、篠田ミル(ミュージシャン)、居原田遥(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科博士後期課程)
参加費:無料
参加方法:事前予約制

また2022年4月、タイガーモブ株式会社による4日間のオンラインプログラム「【分断を繋ぐアートの力】ミャンマーに平和を」が開催され、本展キュレーターの居原田遥、アーティストのカミズが登壇しました。