TERASIA Online Week 2022

2022 タイ

 タイでは2020年夏、日本とも縁の深い演劇人のナルモン・タマプルックサー(愛称:ゴップ)を中心に、北部の中心都市チェンマイを拠点とするアーティストが集まりテラジアの活動が始まりました。同年10月には演劇作品『TERA เถระ(テラ・テラ)』を上演し、今年2022年は、その初演から2年が経過します。
 「テラジア オンラインウィーク2022」に合わせ、現地のアーティスト・チームが『TERA เถระ』の公演会場・パーラート寺院を再訪。作品に登場する様々な思想や世界観を深化させ、新たに制作した音楽と、アーティストがチェンマイ大学で行った『TERA เถระ』の上映会・ディスカッションの映像を公開します。作品に登場する様々な思想や世界観を深化させ、新たに制作した音楽と、上演を静止画の形で再構成するデジタル写真展を発表します。また、アーティストがチェンマイ大学で行った『TERA เถระ』の上映会・ディスカッションの映像を公開します。

楽曲『Circle of Karma』

『Circle of Karma』は、タイのテラジアチームによる演劇作品『TERA เถระ(テラ・テラ)』における「死」の思想を現代音楽として表現した楽曲です。
曲の主なテーマは、仏教とヒンズー教の「カーラ」という永遠に繰り返される時間。生きるもの全ての生死、そしてそれらの「カルマ(業)」、行いの果報が、過去から未来へと続きます。
作曲・演奏:グリット・レカクン、トーポン・サメージャイ

オンライン配信期間

2022年11月10日(木)12:00[日本時間] 以降、期間の定めなく公開

作品の見どころ

冒頭の弦楽器ピンピアの音色が象徴するのは、カーラの時計。人生の始まりから、愛・貪欲・怒り・情欲と共に、生きる時間を刻み続けています。そして、ピーチャムとバーンスリーの笛の音に乗って、死後の人生の旅へ。そこで聴こえるスーン、ソーロー、尺八の乱れた旋律は、罪深く貪欲な魂の因果応報の苦しみと叫び。いずれ、チベットとラーンナーのお経の音により、全ての魂が解放され、再び新たな命に生まれ変わる——。『Circle of Karma』は、悟りへの道を歩む者以外、私たちが終わりのない時輪を巡り続けていることを表現しています。

デジタル写真展『Reflection and Reinterpretation of TERA เถระ』

『TERA เถระ(テラ・テラ)』のアーティスト・チームが、2020年に上演した作品を振り返り、新たに制作した写真展。作中の様々な物語を再解釈し、静止画で再構成する試みです。
Reflection and Reinterpretation of TERA เถระ

発案・コーディネーター:ナルモン・タマプルックサー
フォトグラファー:ソーンタウィ・トゥムパセス師、スパモーク・シラーラック
俳優:ソノコ・プロウ、グラム・タム
音楽:グリット・レカクン、トーポン・サメージャイ

トーク

『TERA เถระ とワールド・ミュージックの作曲』

2022年10月11日、チェンマイ大学芸術学部で『TERA เถระ(テラ・テラ)』の上映会とトークを開催しました。芸術学部とマスコミュニケーション学部の学生が集まり、映像を鑑賞。その後、演出家のナルモン・タマプルックサー(愛称:ゴップ)と、劇中の音楽を作曲・演奏した音楽家の一人、グリット・レカクンがトークを行い、死や、永遠に続く輪廻の旅など、作品の思想を巡る時間となりました。ワールドミュージック、特に演劇のための音楽の制作プロセスや方法など、学生が自身の作品に応用できる実践的な話も繰り広げられました。当日の活気あるトークとディスカッションの様子が伺える映像です。

[出演]
グリット・レカクン、ナルモン・タマップルクサー(愛称:ゴップ)

[言語]
タイ語(英語字幕あり)

オンライン配信期間

2022年11月10日(木)12:00[日本時間] 以降、期間の定めなく公開

アーティスト

ナルモン・タマプルックサー
ナルモン・タマプルックサー
(愛称:ゴップ)
パフォーマー・演出家・プロデューサー。チェンマイを拠点に、演劇をツールとしてソーシャル・アクティビズムに取り組む。1997年、インドネシア・ニューヨーク・台湾・インドなどの演劇人と「International WOW Company」を設立。World Artist for Tibet、Arts Against War、ニューヨークダンスシアターの「メコンプロジェクト」など、様々な芸術イベントの芸術監督、コーディネーターを務める。野田秀樹作・演出『赤鬼』(97年初演 シアタートラム)出演。2005年アジア現代演劇コラボレーション『ホテル・グランドアジア』出演。『モバイル』(2007年 ネセサリーステージ制作 シアタートラム)出演。2014年、劇団印象『匂衣』(鈴木アツト演出)出演。チェンマイ大学マスコミュニケーション学部演劇プログラム講師。
ソノコ・プロウ
ソノコ・プロウ
演出家、俳優、舞踏ダンサー、自己変革ワークショップ講師。日本・中国・タイのルーツを持ち、タイを拠点に活動する。多彩な技術と舞台上での独特の存在感で、タイ現代演劇界を代表するアーティストの一人に数えられる。Khandha Arts’n Theatre Companyの芸術監督として、舞台公演、ワークショップ、海外カンパニーや国際フェスティバルとの共同制作をリードする。
グラム・タム
グラム・タム
旅人、グラフィック・デザイナー、インテリア・デザイナー。デリー大学仏教学部卒。僧侶としてチベットで2年間修行し、ダライ・ラマ法王に学位を授与される。
タイに帰国後、旅の経験をデザインに活かし、カルマカメット・ホテル、X2 コーサムイなどのグラフィックやインテリア・デザインを共同クリエーターとして手掛ける。
パフォーミングアーツの分野では、2010年、高嶺格『Melody Cup』に出演し、日本・タイでのツアーに参加。現在、バンコクのスワンナコンカン財団で天文学を教えている。
グリット・レカクン
グリット・レカクン
バンコクのマヒドン大学音楽学部卒業後、ロンドン大学SOASで博士課程(民族音楽学)を修了。SOAS音楽学部でタイの伝統音楽を教えたのち、現在はチェンマイ大学芸術学部で教鞭を取る。専門はタイの木管楽器。実験的な音楽に関心があり、2003年からタイの伝統音楽と現代音楽のバンドKorphaiのメンバーとして活動。2004年、タイの伝統音楽映画「Home Rong」のサウンドトラックを担当。2012年にASEAN・韓国伝統音楽オーケストラと共演し、2019年にはピチェ・クランチェンの現代舞踊劇「Mahajanaka Dance Drama」英国ツアーで演奏した。
トーポン・サメージャイ
トーポン・サメージャイ
チェンマイ大学芸術学部タイ芸術専攻卒業。専門はラーンナー音楽。北タイ伝統音楽の演奏家として活動する他、チェンマイで様々な音楽イベントの企画・監修を手掛ける。ラーンナー音楽および民族音楽の研究者として、ラーンナーの打楽器奏者に関する本の編集も行う。現在はチェンマイ大学芸術文化振興センター所属。
スパモーク・シラーラック
スパモーク・シラーラック
子どもの本屋「Bookish Buffalo」にあるカフェコーナーのバリスタ。独立系スタジオ「Mayim Studio」の映像作家(Mayimは「ほほえむ犬」の意味)。さまざまなペンネームを持つ作家。宗教、哲学、内省、社会や周縁で起きていることに関心を持ち、自らの考えをドキュメンタリー、長編映画、短編、小説、エッセイ、詩、歌で伝えようとする人。現在はコーヒーを淹れる以外に、タイの政治的要求に関する長編ドキュメンタリーの制作、映画のシナリオや他の執筆に時間を割いている。
ソーンタウィ・トゥムパセス師
ソーンタウィ・トゥムパセス師
15年前に出家した若い仏教僧。ラオスの首都ヴィエンチャンで仏門に入る。現在はマハーチュラロンコーン・ラージャヴィドゥャ大学チェンマイ校で仏教学の修士課程に在籍。勉学の傍ら、国外からの参加者向けに仏教学と瞑想の知識を提供する「モンク・チャット」というプログラムの代表として精力的に活動してきた。今はジャングルに佇む古刹、パーラート寺院で生活し、寺院の美しい景色と穏やかな雰囲気を写真に納め、世界に発信している。